第四篇 軍争
☆☆☆無理せず、損をしないこと☆☆☆



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第1節 損をしないことが最重要条件
第35回 待つも相場(損と儲けの発生要因)

 これまでの3篇にわたって、投資を始めることに対する総論的なことを説明しました。「投資を始める前の心構え」、「実際に始めた後の方針である短期投資」と「リスクの少ない投資の重要性」を説明しました。今回からは、各論と言うことで、本篇では、実際に資金を動かす場合の方針を説明したいと思います。これまでの部分と重複することが多数あると思いますが、それだけ重要なことだと思って、よく理解して下さい。孫子は、

 「古の名将と言われる人達は、まず、敵軍がどんな攻撃を仕掛けても敗けないように自軍の態勢を整えて、どんなに拙い攻撃をしても勝てるような敵の間隙を待ったのである。何故なら、敗北するかどうかは自軍の問題であり、勝利するかどうかは敵軍の問題だからである。」

 と、しています。これを株式投資に置き換えると、

 「古の名投資家と言われる人達は、まず、相場がどんな動きになっても損失を出さないように自分の投資方法を確立して、どんなに拙い仕込みをしても利益が得られるような相場の動きを待ったのである。何故なら、損失を出すかどうかは投資家自身の問題であり、利益が得られるかどうかは相場の動きの問題だからである。」

 になると思います。歴史に成功者として名を残している投資家は、どんな事態に陥っても大損しないことを第一に考えて、儲けることを二の次として株式投資を行ないました。だから、成功したのです。つまり、相場がどんな状況に陥っても、損しないように自分の投資方法を確立させた後に、素人でも儲けられるような相場の動きになるときを待って、仕込みをしたのです。どうして、このような一見消極的とも思える投資方法を採用したのか。それは、損するかどうかは投資家自身で決められることなのですが、儲けられるかどうかは投資家自身で決められないことだからです。損しないでいるのは、仕込みを控えれば良いだけのことですから、誰でも簡単にできます。しかし、儲けるのは、仕込んだ後に思惑通りに銘柄が動かなければなりません。銘柄が思惑通りに動くと言うのは、その方向で他人間の売買が成立するということですから、どうしても他人任せになってしまいます。また、自分自身が儲かる価格で撤退するというのは、当然、その価格で自分と反対の動きをする人が要る訳ですから、やはり他人任せとなってしまいます。

 もう少し、詳しく説明しますと、儲けと損というものは、仕込みの状態にあるときに発生します。仕込んでいる銘柄が、上がれば儲け、下がれば損ということです。そんなことはわかっていると叱られそうですが、実は、これが非常に重要なことなのです。と言うのも、株価というものは、自分で上げたり、下げたりすることができないものです。株価の動きは受動的であり、他人任せです。つまり、株価というものは、上がるか、下がるかは、確率論で言えば、いつも五分五分の状態にあるということになります。我々投資家は、その五分五分の状態にあるものを、材料という尺度を利用して、その変化である上げ、下げを予測して、買ったり、売ったりして儲けようとしているのです。しかし、多くの投資家は、儲けられていません。確率としては五分五分なのですから、儲からないまでも、損することはないでしょう。それなのに、多くの投資家が損をしています。それは、仕込まないと儲からないという言葉の裏にある、仕込まなければ損をしないという言葉を、忘れているからだと、私は考えています。

 名投資家は、相場がどんな動きになっても、損しないように自分の投資方法を確立してから、相場に臨みます。投資方法や銘柄選定については色々な方法がありますが、共通して言えることは、短期トレンドの中の押し目であり、数日間の日保ちがあるような銘柄を選別して仕込むという方法です。つまり、逃げ場がある銘柄を選んで仕込むということです。儲かる銘柄よりも、損しない銘柄を選ぶということです。例えば、例としては低劣ですが、プロの空き巣は、逃げ道を確保してから、金目のものを漁ります。そして、金目のものの有無に関わらず、数分で退去します。また、室内を物色している間は、必ず、つま先は逃げ道の方に向けています。これは、前科何犯という空き巣をしていた人から聞いた実話です。ただし、彼が言うには、本当のプロは、自分のように捕まらないから、もっと、用心して盗みを働いているはずだと言います。つまり、空き巣も、盗むということよりも、捕まらないということを第一に考えて、空き巣に入っているということです。われわれ投資家も、空き巣程度の危機意識は、最低限必要でしょう。まず、損無しに撤退できる銘柄を選び、儲けが無ければ、動きが無くても撤退し、持続している間は、いつでも撤退できるように準備をしておくということです。こういう投資方法を確立できれば、損をしないとまではいかなくても、損を気にせずに済む程度にはなれるのではないでしょうか。

 そして、名投資家は、このような投資方法を確立してから、どんなに下手な仕込み方をしても、儲けられるような相場の動きを待って、仕込みをしたということです。つまり、損をし難い投資方法を確立しただけではなく、更に、損するリスクを限定するために、仕込むときと、その期間を限定したのです。いつまでも、ダラダラと仕込み続けるのではなく、メリハリをつけて、相場に臨んだのです。また、その仕込むタイミングというのは、全体では、相場がそれ以上下押ししない、または、例え下押しがあっても浅く、再度、買値に戻るようなタイミングです。また、個別銘柄であれば、簡単に言えば、逃げ場があるタイミングと言うことです。損しないためには、それこそ好機が来るまで、ひたすら待ち続けるのです。「待つも相場」とは、良く言ったものです。

 ところで、孫武の末裔に、戦国時代、斉王国で軍師になった孫□(ヒン:月へんに賓)が著した兵法書(孫□子)の中に、「四路五動」というのがあります。「四路」とは、道には前後左右があるということであり、「五動」とは、前後左右に動くこと以外に、動かないという行動があるということです。つまり、道が4つあれば、動きも4つあると考えがちですが、そうではなく、故意に動かないという動きもあるということです。必ず動かなければならないということではないということです。ただ、ここで言う「動かない」ことは、選択できずに躊躇して動けないということとは違います。あくまで、能動的に「動かない」ということです。このことを株式投資に当て嵌めると、「二路三動」ということでしょうか。売り、買いという「二路」と、売る、買う、動かないという「三動」です。この「二路」に対する「三動」で、我々は、儲けを手に入れていくのです。

 どうしてここまで、損することを避けようとするのかと言えば、損するかどうかは、投資家自身の行動で決めることができますが、儲かるかどうかは、銘柄の動きによるのであって、投資家自身で決められないからです。損しないでおこうと思えば、簡単です。仕込みしなければ良いのです。それこそ、一生仕込みしなければ、儲けが無い代わりに、絶対に損することはありません。しかし、儲けようと思えば、そうはいきません。仕込みしなければなりません。ところが、儲かるかどうかは、仕込んだ銘柄が、思惑通りに動くかどうかにかかっています。思惑通りに動かなければ、損することになってしまいます。ですから、投資家がコントロールできる損をいかに減らすかにより、儲けが出てくるということになります。そのためにも、仕込まないという行為の重要性に、早く気付く必要があります。

 そして、ここでの教訓は、損というものは、儲けと違って、投資家自身で管理できるものということです。仕込まなければ損をしないということです。相場は、生き物であり、今日の高値は、明日の安値かもしれません。しかし、騰がり続けた相場が一度も無いように、必ず、安全な押し目という買い場が作られます。そのことを信じて押し目を待ち、その上で、損をしない投資方法で仕込みをするということです。そうすれば、儲けというものは、自ずと生まれてくるということです。


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