第三篇 謀攻
☆☆☆リスクを減らした投資方法☆☆☆



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第1節 トレンドから見るリスクの少ない投資
第26回 百戦して百勝するは、善の善なるものに非ず

 前回、トレンドに従った投資の重要性について説明しました。トレンドに従うことは、投資リスクを大きく減らす上では、非常に重要ということです。孫子は、

 「だから、100回戦って100回勝っても、最善の勝ち方ではないのである。戦わずに敵を屈服させてこそ、最善の勝ち方なのである。」

と、しています。これを株式投資に置き換えると、

 「だから、100回逆張りして100回成功しても、最善の投資方法ではないのである。リスクを少なくして利益を上げてこそ、最善の投資方法なのである。」

 になると思います。この一文を見て、100回逆張りして100回とも成功すれば良いではないか。例えリスクが高くても、成功すれば良いではないか。成功さえすればリスクなんか関係ない、リスクを打ち破るだけの成功を得たら良いのだと思われるのではないでしょうか。確かに、生涯、負けることなく、勝ち続けられれば、リスクなんかくそ食らえでしょうが、株式投資で勝ち続けられることは、絶対にできません。このことは、歴史が証明しています。

 過去、多くの偉大な投資家達が大勢いました。それこそ、今の金額に換算したら、数百億円とか、数千億円という額を手にした投資家もいました。彼ら全てが、充実した人生を最後まで送れたかと言えば、そうではありません。やはり、最後の一勝負に負けて、悲惨な末路を歩んだ人も居るのです。

 例えば、大阪中之島のシンボル中央公会堂をポケットマネー(現在の価格で50億円程度)でぽんと建設し、大阪に寄付した相場師として有名な岩本栄之助という人が居ます。1904年の日露戦争の狂乱相場で大儲けをして、財を成した人です。当時の日本の株式市場は、1914年の第一次世界大戦の終結まで続く、暴騰相場の真っ只中でした。彼は、この暴騰相場を利用し、大阪を代表する財界人にまで成長したのです。そして運命の1916年、彼は、このような暴騰相場がいつまでも続く訳が無く、必ず次には大暴落相場が来ると読み、大きく売り仕掛けの勝負に出たのです。その彼の予想は的中しました。彼は、世界を震撼させた世界大恐慌の出現を予見していたのです。しかし、その頃、彼は既にこの世の人ではありませんでした。株式相場はロウソクと同じで、燃え尽きる瞬間が、最も華々しく、美しいのです。そう、彼の売り仕掛けは、少し早過ぎたのです。彼は燃え尽きる瞬間の最後の大暴騰相場に巻き込まれ、華々しく散ってしまったのです。1916年10月22日のことです。岩本栄之助は、39歳で、無念のピストル自殺をする破目になってしまったのです。中央公会堂の完成は、1918年でしたから、彼は、完成を見ずに、この世を去ったのです。

 他にも、「兜町の飛将軍」と言われた太田収は、東京帝国大学(現東京大学)法学部を卒業したエリートで、旧山一證券の社長にまで上り詰めた人です。当時、情報の収集と分析においては並ぶもの無しと言われた人で、大成功を収めた人です。しかし、たった一度の失敗、鐘紡株の仕手戦で失敗し、破産して、昭和13年5月に青酸カリを飲み自殺しました。

 また、最近では、英国の名門銀行であるベアリング銀行のトレーダーであったニック・リーソンの話があります。彼は、27歳で、ベアリング銀行の利益の20%を稼ぎ出す程の辣腕トレーダーでした。その彼は、1995年に日本を襲った大地震、阪神大震災で、たった一度の過ちを犯してしまいます。彼は、震災を受けて、被害の大きさと復興需要の双方が株式市場に与える影響は、50/50と予想し、オプション取引で株価が大きく動かないというスタンスを取りました。しかし、現実の日経平均は、19,000円から16,000円に大暴落したのです。毎日、放送される震災の悲惨な状況から、日本人の購買意欲が著しく減退してしまったため、企業業績が振るわなくなってしまったのです。この取引でのベアリング銀行の損失は、一気に1,500億円に膨らみ、倒産せざるを得なくなったのです。

 日本にも、昭和の最後の相場師と言われた是銀こと、是川銀蔵という名相場師がいました。彼は、1992年に95歳で没したのですから、つい最近の相場師です。それこそ、数百億円という儲けを得ていながら、死んだときの遺産は、24億円の借金だったそうです。つまり、死ぬときは無一文だったということです。

 このように、我々が想像もつかない成功を収めながら、最後の一勝負に敗れたが為に、命を絶った投資家を数え上げれば、枚挙に暇はありません。それは、やはり、常勝の中に潜む油断というリスクを忘れて、人生を賭けた大勝負をしたからではないでしょうか。

 最後の一戦に敗れてこの世を去った歴史上の人物の中で、最も有名なのは、楚の覇王と言われた項羽でしょう。彼は、戦えば必ず勝つという常勝の英雄でした。反対に、この項羽を破ったのが、連戦連敗で、最後の一勝負のみ勝った劉邦、つまり漢帝国の高祖です。彼らは、何度と無く戦い、必ず項羽が勝利していました。ところが、最後の最後に、項羽は劉邦に敗れてしまいます。そこで項羽は、再起を図ることを諦め、従容と死を選ぶのです。勝ち続けたが故に、逆境に弱かったということでしょうか。たった一度の敗戦が、人生を180度回転させてしまいます。この恐ろしさは、体験したことがある者しかわからないのかもしれませんが、体験してしまってからでは、もう手遅れということです。

 ですから、100回トレンドに逆らって仕込みをして、その全てを成功させて大儲けしたとしても、最も優れた投資方法と言うことはできません。例えその投資家が、どんなに優れた能力を持ち、どんなに優れた方法を確立していたとしても、やはり、最も優れた投資方法とすることはできません。なぜなら、今、説明しましたように、リスクが少ない方法で儲けてこそ、最も優れた投資方法とすることができるからです。株式投資は、それこそ自分の一生を左右する程のものなのですから、リスクを少なくする投資を心掛けなければならないのです。

 そこで、ここでの教訓は、どんなに株式投資に成功し、精通したとしても、リスクの存在を忘れずに、リスクを回避することを第一に考えなければならないということです。それこそ、100回投資をして、その全てで大成功を収めたとしても、101回目で今までの儲けの全てを吐き出さざるを得ないことになりかねないからです。リスクの前では謙虚であれということが、ご理解頂けたでしょうか。


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