第二篇 作戦
☆☆☆勝つための具体的な方法☆☆☆



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1.原 文

 孫子曰、凡用兵之法、馳車千駟、革車千乘、帯甲十萬、千里饋糧、則内外之費、賓客之用、膠漆之材、車甲之奉、日費千金、然後十萬之師拳矣、其用戦也、勝久則鈍兵挫鋭、攻城則力屈、久暴師國用不足。
 夫鈍兵挫鋭、屈力殫貨、則諸侯乘其弊而起、雖有智者、不能善其後矣、故兵聞拙速、未睹巧之久也、未兵久而國利者、未之有也、故不盡知用兵之害者、則不能故不盡知用兵之利也。
 善用兵者、役不再籍、糧不三載、取用於國、因糧於敵、故軍食可足也、國之貧於師者遠輸、遠輸則百姓貧、近於師者貴売、貴売則百姓竭、財竭則急於丘役、力屈財殫中原、内虚於家、百姓之費、十去其七、公家之費、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十去其六、故智将務食於敵、食敵一鍾、當吾二十鍾、□□一石、當吾二十石。
 故殺敵者怒也、取敵之利者貨也、故車戦得車十乘已上、賞其先得者、而更其旌旗、車雑而乘之、卒善而養之、是謂勝敵而益強。
 故兵貴勝、不貴久、故知兵之将、生民之司命、國家安危之主也。


2.書き下し文

 孫子曰く、およそ用兵の法、馳車千駟、革車千乗、帯甲十万、千里にして糧を饋るときは則ち内外の費、賓客の用、膠漆の材、車甲の奉、日に千金を費して、然る後に十万の師挙がる。その戦いを用うや久しければ則ち兵を鈍らせ鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈き、久しく師を暴さば則ち国用足らず。
 それ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈し貨を殫くさば、則ち諸侯その弊に乗じて起こる。智者ありといえども、その後を善くすること能わず。故に兵は拙速を聞くも、いまだ巧久しきを睹ず。それ兵久しくして国利あるは、未だこれあらず。故にことごとく用兵の害を知らざれば、ことごとく用兵の利を知ること能わず。
 善く兵を用うる者は、役は再びは籍せず、糧は三たびは載せず。用を国に取り、糧を敵に因る。故に軍食足るべきなり。国の師に貧なるは、遠く輸せばなり。遠師にして遠く輸さば百姓貧し。近師なるときは貴売すればなり。貴売すれば百姓財竭く。財竭くれば則ち丘役に急にして、力は中原に届き、用は家に虚しく、百姓の費え、十にその七を去る。公家の費え、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十にその六を去る。故に智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むはわが二十鍾に当たり、□□一石は、わが二十石に当たる。
 故に敵を殺すものは怒りなり。敵の貨を取るものは利なり。故に車戦して車十乗巳上を得れば、そのまず得たる者を賞し、而して其の旌旗を更め、車は雑えてこれに乗り、卒は善くしてこれを養う。これを敵に勝ちて強を益すという。
 故に兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず。故に兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり。


3.訳 文

 孫武先生が言われている。
 「戦争を行なうには、例えば、戦車1千台、補給車1千台、兵卒10万人からなる部隊を、補給物資を本国から輸送して千里の彼方に遠征させる場合、国内外の経費、外交費用、武器の補充費用、食料の補給費用等併せると、1日1千金もの大金が必要となる。つまり、これだけの費用が無ければ総兵力10万人もの大軍を動かすことはできないのである。それなのに、いざ会戦となったとき、決め手を欠いて戦争を長期化させれば、兵力を消耗した上に、兵隊達の戦意を鈍らせることになる。そこで、力ずくで城攻めを仕掛けるとなると、例え勝ったとしても、その被害は甚大なものとなる。かといって攻めあぐねていると、後方支援の負担は膨大となり、国の経済そのものを破綻させることになる。

 そもそも兵隊の戦意を鈍らし、国庫を枯渇させ、国力を疲弊させるということは、その機に乗じて第三国に攻め込まれる要素を作ることになり、いくら有能な軍師がいたとしても、それを防ぎきるということはできない。だから戦争には『程々の勝利で素早く撤兵すること。』が有利というのは聞くが、『敵国を滅亡させるまで徹底的に戦うこと。』が有利というのは聞かないのである。未だ嘗て、戦争を長期化させて国家に利益があったということは無いのである。だから、戦争の被害を充分知り尽くしていない者は、戦争の利益を充分知り尽くすことができないのである。

 名将と呼ばれる人は、国民を兵役に2度も着かせず、本国からの食糧輸送も3度は行なわず、軍需物資は本国から輸送させるが、食料品等補給物資は敵国内で現地調達するのである。だから、いつも部隊では食料品が溢れているのである。出兵により貧しくなるというのは、遠方まで食料品等を輸送しなければならないからであり、遠方までの輸送に国民が借り出されるから、国民は本業に専念できずに貧しくなるのである。だからといって国の近くで戦争をすると、物資の需給バランスが崩れ、物価が跳ね上がることとなり、物価が跳ね上がると、国民は蓄えを吐き出さざるを得なくなり、国民の蓄えが無くなると、雑役にも苦しむこととなる。そうなると、戦場では兵力が尽きることとなり、国内の家々では家財が尽きることとなる。国民の生活は、平時の7割がカットされ、国費は、武器の補修、補充費用及び戦争用土木工事費用等が歳出の6割を占めることとなる。だからこそ智将は、敵国内に遠征して、食料を現地調達するのである。敵食料を1斗奪うのは、味方の食料20斗運ぶのと同じだけの価値があり、敵飼料を1石奪うのは、味方の飼料20石運ぶのと同じだけの価値があるからである。

 これと同じ意味で、敵を殺すというのは思慮の足りない野蛮行為であり、敵を虜にするというのは利益を考えた正当な行為なのである。だから、敵戦車10台以上を捕獲したときは、先駆けの者に賞としてそれを与え、旗印を取り替えて味方の戦車とするのである。降伏した敵兵は手厚くもてなして、味方にするのである。このことこそが、敵に勝って益々強くなるということなのである。

 だからこそ、戦争というのは勝つことが先決であるが、長引かせることはよくない。このことは、兵隊たちの運命を左右することであり、国民の命を司るものであり、国家の安危を握っているものなのである。」


4.内 容

 戦争というものは、消費経済と言われるだけのことはあって、多額の費用が必要となる。だからこそ、国民の負担を考えて、戦争をする場合は短期決戦で臨むべきである。また、兵隊達のやる気や諸外国の情勢を考えても、やはり短期決戦にすべきである。

 短期決戦で臨むにしても、少なからず国民に負担を強いることとなるが、その負担を極力減らすために、現地調達が必要となってくる。この現地調達というのは、敵国の国民から食料・財貨を奪うということではない。敵軍から奪うということである。味方であろうと敵であろうと、国民は大事にしなければならないのである。現地調達した物の価値は、本国から輸送したものの20倍になる。というのも、輸送するための費用(人件費、輸送する者の食糧費、牛馬などの家畜、その家畜の飼料等)が膨大となるからである。

 そういう意味で、兵隊も現地調達すべきである。無闇やたらに敵兵を虐殺すべきではない。降伏して翻意させて味方に引き入れるべきである。戦う度に殺していれば、味方の被害も無視できないものになり、戦う度に国力が疲弊するのである。反対に戦う度に吸収していれば、味方はどんどん増え、戦う度に国力が充実するのである。

 だから戦争するにあたって考えることは、
   @ 勝つこと
   A 長引かせないこと である。

いくら勝っても、長引かせて国力を疲弊させれば、今度は他の諸侯の餌食となる番になるからである。


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