第一篇 始計
☆☆☆事前に勝敗を見極めるための方法☆☆☆



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1.原 文

 孫子曰、兵者国之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也。故経之以五事、校之以計、而索其情。一曰道、ニ曰天、三曰地、四曰将、五曰法。道者令民与上同意、可与之死、可与之生、而不畏危也。天者陰陽寒暑時制也。地者遠近険易広狭死生也。将者智信仁勇厳也。法者曲制官道主用也。凡此五者、将莫不聞。知之者勝、不知者不勝。
 故校之以計、而索其情。曰主孰有道、将孰有能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明。吾以此知勝負矣。
 将聴吾計、用之必勝。留之。将不聴吾計、用之必敗。去之。計利以聴、乃為之勢、以佐其外。勢者因利而制権也。
 兵者詭道也。故能而示之不能、用而示之不用、近而示之遠、遠而示之近、利而誘之、乱而取之、実而備之、強而避之、怒而撓之、卑而驕之、佚而労之、親而離之。
 攻其無備、出其不意。此兵家之勢、不可先伝也。
 夫未戦而廟算勝者、得算多也。未戦而廟算不勝者、得算少也。多算勝、少算不勝。而況於無算乎。吾以此観之、勝負見矣。


2.書き下し文

 孫子曰わく、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。故にこれを経るに五事を以てし、これを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。 道とは、民をして上と意を同じうせしむる者なり。故にこれと死すべくこれと生くべくして、危きを畏れざらしむるなり。天とは、陰陽、寒暑、時制なり。地とは、遠近、険易、広狭、死生なり。将とは、智、信、仁、勇、厳なり。法とは、曲制 官道 主用なり。凡そ、この五者は、将は聞かざること莫きも、これを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。
 故にこれを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。曰く、主は孰れか有道なる、将は孰れか有能なる、天地は孰れか得たる、法令は孰れか行なわる、兵衆は孰れか強き、士卒は孰れか練いたる、賞罰は孰れか明らかなると。吾れ此れを以て勝負を知る。
 将、吾が計を聴くときは、これを用ふれば必ず勝つ、これを留めん。将、吾が計を聴かざるときは、これを用ふれば必ず敗る、これを去らん。計、利として以て聴かるれば、乃ちこれが勢を為して、以て其の外を佐く。勢とは利に因って権を制するなり。
 兵とは詭道なり。故に、能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱してこれを取り、実にしてこれを備へ、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し、卑にしてこれを驕らし、逸にしてこれを労し、親にしてこれを離す。
 その無備を攻め、その不意に出づ、此れ兵家の勢、先には伝うべからざるなり。
 夫れ未だ戦はずして、廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり。未だ戦わずして、廟算するに勝たざる者は、算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況んや算無きに於いてをや。吾れ、此れを以つてこれを観るに、勝負見わる。


3.訳 文

 孫武先生が言われている。
 戦争というものは、国にとっては重大事である。それは、国民にとっては生死の分かれ目となり、国家にとっては存亡の危機となるからである。だから、戦争をするに当たって、事前にその勝敗の見通しが立たないというのは済まされないことなのである。そこで、その見通しを立てる為に、5つの条件について敵国と比較し、それぞれについて分析して、その優劣を調査しなければならない。その条件とは、1つ目は『道』、2つ目は『天』、3つ目は『地』、4つ目は『将』、5つ目は『法』である。『道』とは、国民と君主の意識が同じという政治的条件、つまり大義名分のことである。大義名分があれば、君主の命令でその生死が決定されても、国民は畏れることが無くなるからである。『天』とは、天候、寒暑、時節等自然的条件のことである。『地』とは、距離、険しさ、広さ、高さ等地理的条件のことである。『将』とは、智略、信義、仁愛、勇敢、厳正を併せ持つ将軍の資質のことで人的条件のことである。『法』とは、軍隊統制に関する法令、政務、組織等規範的条件のことである。およそ、これら5つの条件について、聞いたことが無い者はいない。つまり、これらのことをより深く理解している者が勝利を収め、理解していない者が勝利できないということなのである。

 だから、より深く理解するために、更に細かく分析して、その優劣を探るのである。つまり、どちらの君主がより国民から支持されているか、どちらの将軍がより有能であるか、どちらの国がより自然的、地理的条件を得ているか、どちらの法令がより厳格に適用されているか、どちらの軍隊がより強力であるか、どちらの兵士がより熟練しているか、どちらの賞罰がより明らかであるか、である。以上のことを分析することにより、戦争を行なう前から、勝敗の行方を知ることができるのである。

 そこで、もし、全軍を任せる将軍が以上のこのことを理解しているのであれば、必ず勝つことになるので、この者を留任させることができる。反対に、理解していないのであれば、必ず敗れることになるので、留任させることができない。そして、分析の結果、勝算有りとして出兵の勅許が得られたのであれば、後は情勢を整備して、出兵後の障害を減らさなければならない。情勢とは、利益によって、反対勢力を制することである。

 戦争とは、人の考えの裏をかくことである。だから、できるのにできないように見せかけたり、必要なのに不要なように見せかけたり、近いのに遠いように見せかけたり、遠いのに近いように見せかけたりしなければならない。また、敵が利益を求めていれば誘い出したり、混乱していれば奪い取ったり、充実していれば備えたり、強ければ避けたり、怒っていれば掻き乱したり、謙虚であれば増長させたり、楽をしていれば疲労させたり、親しんでいれば分裂させたりしなければならない。

 その無防備を攻め、不意を衝かなければならない。これが兵法でいうところの「兵勢」であって、予め教えることができないものなのである。

 開戦前の御前会議において、既に勝っているというのは、勝算が多いからである。反対に、開戦前の御前会議において、既に負けているというのは、勝算が少ないからである。勝算が多ければ勝ち、少なければ勝てないのは当然である。まして、勝算無き戦いなど勝てることがあろうか。私は、この会議を観ることにより、勝敗の行方を事前に知ることができるのである。


4.内 容

「勝算の無い戦いはしない。」、「負ける戦はしない。」ということである。戦争というものは、最も慎むべき行為であり、避けなければならない行為である。しかし、どうしても戦わなければならないことがある。そういうときには、まず勝算を確認して戦うのである。勝算の判定の基準となるのは、以下の5つである。
@『 道 』〜 その戦いに対する国民の賛成を得ること。即ち心理的条件のこと。
A『 天 』〜 天候、季節、時間などの自然的条件のこと。
B『 地 』〜 遠近、険易、広狭などの地理的条件のこと。
C『 将 』〜 将軍の能力のことであり、人的条件のこと。
D『 法 』〜 法規の整備、モラルの維持等のことであり、規範的条件のこと。

 この基準の判定の仕方は、以下の7つである。

@『支持率』〜 どちらの国の君主が人民からより支持されているか。(今でいう「内閣支持率」。日本は滅亡寸前みたいな国!!)
A『自 然』〜 どちらの国がより自然的、地理的条件を得ているか。(プロ野球でも遠征試合の勝率は低い!?)
B『将 軍』〜 どちらの国の将軍がより有能であるか。(指導者が無能では・・・・。日本の首相の能力は・・・・・。)
C『モラル』〜 どちらの国の法令がより厳守されているか。(検挙率の低下が犯罪を招く。犯罪が増えれば、国は荒廃する・・・・。)
D『軍事力』〜 どちらの国の軍隊がより強力であるか。(核ミサイルでもなんでも軍事力がある者が勝ち!!アメリカが勝ち!!)
E『熟練度』〜 どちらの国の兵隊がより練熟しているか。(やはり、何でも熟練した技は必要!!)
F『公平性』〜 どちらの国の賞罰がより公平であるか。(賞罰の適用が不公平では、国民がやる気を無くす!!年俸の低い阪神の選手は!?)

以上の基準で判断して、勝算が多ければ戦い、少なければあくまで戦争を避けるべきである。

さて、実際に戦いとなったとき、将軍は『勢』を見極めて、臨機応変に対処して、自軍を勝利に導かなければならない。つまり、自軍を敵軍より優位な位置に立たせることによって、より確実な勝利を手にするよう努力しなければならないのである。それは、敵の不備をつくことであり、不意を狙うことである。その方法としては、以下がある。

@ 出来るのに出来ないように見せかけて、敵の油断を誘う。
A 必要なのに不必要なように見せかけて、敵の油断を誘う。
B 近いのに遠く見せかけて、敵の油断を誘う。
C 遠いのに近く見せかけて、敵の油断を誘う。
D 敵が戦功を立てたがっているときは、誘い出して死地に導く。
E 敵が混乱しているときは、敵陣を奪い取る。
F 敵の戦意が高いときは、守りに徹し戦いを避ける。
G 敵が怒り高ぶっているときは、逆上させてまともな判断力を無くさせる。
H 敵が謙虚にしているときは、驕り高ぶらせ怠慢にする。
I 敵が楽をしているときは、疲弊させる。


戦いというのは、勝たなければならないのであり、勝つためにはどんな手でも用いなければならない。


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