戦 国 策
☆☆☆人の前で上手に話す方法を徹底追求☆☆☆



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秦 策
第12策 信頼の勝ち取り方

 秦の武王が、韓の宜陽(ぎよう)という都市を攻略しようとしたときのこと。その攻略の将軍に甘茂(かんぼう)に任命した。ところが、甘茂はなかなか兵を出そうとはしなかった。武王は不審に思って、甘茂に問い質した。

 「どうして直ぐに出発しないのだ。」

 「宜陽という都市は大きく、規模で言えば県に匹敵します。そう簡単に、攻め取れるものではありません。私は持久戦で攻略しようと考えていますが、時間がかかると、陛下の側にいる多くの近臣たちが、攻略に時間がかかるのは、私が無能だからと陛下に言上するでしょう。それを何度も聞かされた陛下は、始めはそのように思われなくとも、そのうち、そうだと思い込むことになるでしょう。

 例えば、昔、孔子の弟子で、親孝行で有名な曾参(そうしん)が、費という町に居たときのことです。この時代の刑法では、殺人の罪は三属まで及ぶということで、両親も罰せられた時代です。たまたま、曾参と同姓同名の別人が、人を殺したのを伝え聞いた人が、曾参自身が人殺しをしたと勘違いをして、曾参の母に慌てて、その事実を教えました。
 「曾参が人を殺したらしい。」
 「あの子は、人を殺すような子ではありません。」
 と機織の手を休めずに、曾参の母は応えます。
 また、別の人が、飛び込んで来て言った。
 「曾参が人を殺したらしいぞ。」
 曾参の母は、気にせず機織を続けた。
 そして、また、別の人が息を切らせながら飛び込んできた。
 「曾参が人を殺めてしまったらしい。」
 これを聞いた曾参の母は、本当に息子が人を殺したと思い、機織を途中で投げ出して、垣根を越えて逃げてしまったということです。
 曾参自身は親孝行で有名なほど、母を大事にした人です。そのような人が、母に罪が及ぶようなことをする訳がありません。そのことは、曾参の母が一番良く知っているはずです。しかし、三人の人が、別々に、
 「曾参が人を殺した。」
 と言えば、曾参の母ですら、曾参が人殺しをしたと疑ったのです。曾参の母が持つ曾参を信頼する心も、三人の人の偽言には勝てなかったということです。
 今、私の陛下に忠誠心は、曾参の母に対する孝心の足元にも及ばないでしょう。また、陛下の私に対する信頼も、曾参の母には及ばないでしょうし、私を非難する者の数も、3人では済まないでしょう。ですから、私は、私の考えた持久戦が、途中で中止になると予測できるから、敢えて出兵しないのです。」


 「そういうことならわかった。私は誰の偽言にも惑わされず、そなたを信じ抜こう。ここで誓っても良いぞ。」

 この言葉を聞いて、甘茂は宜陽攻略に出陣したが、5ヶ月経っても攻め落とせなかった。案の定、武王の近臣たちが、甘茂の悪口を言い出した。始めは無視していた武王であったが、終にはその偽言に惑わされ、甘茂を召還して、責任を問おうとした。これに対して、甘茂は、言った。

 「出兵前の誓いをお忘れか??」

 「おお、そうじゃった。そうじゃった。忘れてはおらぬ。」

 武王は誓いを思い出し、甘茂に援軍を差し向けた。甘茂は援軍と合流して、終に宜陽を攻略した。

 普通に、武王に信頼してくださいと甘茂が言っても、武王は口で応じるだけで、心からの信頼を寄せなかったでしょう。だからこそ、敢えて、武王を不機嫌にさせて、その心の隙を狙って、甘茂は信頼を勝ち取った訳です。


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