戦 国 策
☆☆☆人の前で上手に話す方法を徹底追求☆☆☆



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秦 策
第10策 事象の表裏の推し量り方

 斉が楚を助けるために、秦の領土である曲沃(きょくよく)を攻め取った。その後、秦は恨みを晴らすために斉を攻めようとした。ところが、斉と楚の仲は親密であり、斉を攻めれば楚が攻めてくるのは必至の状態だった。秦といえども、斉と楚を同時に敵に回すことができなかったのである。このことを患いだ恵王は、張儀を召して言った。

 「私は斉を攻めたいのだが、斉楚同盟が強固で攻めることができない。なんか良い方法は無いだろうか。」

 これに対して張儀は、こう答えた。

 「わかりました。私に一計があります。馬車と弊物をご用意下さい。やってみましょう。」

 張儀は、南下して、楚の首都に入り、楚の懐王に会って言った。

 「わが王(恵王)が好意を寄せられているのは、陛下(懐王)を置いて他にはいません。また、私が仕えたいと思うのも、陛下を置いて他にはいません。わが王が憎んでいるのは、斉王以外の何者でもなく、また私自身が憎んでいるのも、斉王以外にはいません。今回、斉王は、わが王に対して、非常に大きな罪を犯しました。そこでわが国と致しましては、斉に報復をしようと思いますが、大国である貴国が斉と同盟されており、わが王は陛下と誼を通じることができず、また私も、お仕えすることができません。そこで、もし、陛下が関所を封鎖して、斉との国交を絶って下されば、私は恵王に申し上げて、商と於の領土600里四方を、陛下に献上するように取り計らいます。楚との同盟が無くなった斉は、必然的に弱くなります。斉が弱くなった方が、陛下としても、ご安心できるのではないでしょうか。つまり、このことは、北の斉を弱くして、西の秦に恩を売り、更に商於600里を手に入れるという、一石二鳥、いや一石三鳥の良策ではないでしょうか。」

 懐王は、大いに喜んで、

 「戦わずして、商於の地600里を手に入れた。」

と、朝廷の内外に喧伝した。それを聞いた家臣たちは、皆、懐王に対して祝いの言葉を口にした。陳軫は遅れて懐王に謁見したが、一人祝いの言葉を言わなかった。懐王は、不快に思って言った。

 「一兵も動かさず、一兵も失わず、商於の地600里を手に入れたのだぞ。私は、自分自身で考えても、今回の判断は最良であったと考える。他の臣下たちも、みな祝ってくれている。どうして、お前だけが祝ってくれないのだ。」

 「私の目には、商於の地が手に入らず、悪いことが起きるのが見えているからです。だから、敢えて、お祝いを申し上げなかったのです。」

「どういうことだ。」

「秦の恵王が陛下に好意を寄せられるのはどうしてでしょうか。私が考えるには、陛下が斉と同盟なさっているからです。今、その領土を本当に手に入れる前に、先に斉と断交すれば、陛下は孤立することになります。孤立した陛下を、恵王は従来どおりの好意を寄せてくれるでしょうか。だからと言って、先に領土を割譲せよと言っても、これは張儀の計略ですから割譲する訳がありません。先に斉と断交し、後で領土を要求すれば、必ず張儀に欺かれることになります。もし、張儀に欺かれれば、陛下は必ず、張儀を恨まれるでしょう。つまり、このことは、北の斉と断交し、西の秦に患いを生じ、更に商於600里が手に入らず、来るのは斉と秦の連合軍のみだと、私は考えるのです。」

 楚(懐王)の立場は、張儀を信じるか、信じないかで、180度変わります。つまり、たった一点を見誤っただけで、成果が正反対になるということを知らなければなりません。物事を判断する場合は、表だけでなく、裏も推し量って判断すべきということです。


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