韓子(韓非子)
☆☆☆人と上手に付き合うための方法を徹底追求☆☆☆



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第30篇 内儲説(上)
第3話 竈の夢を見た道化師の話

 衛の霊公には、弥子瑕(びしか)という寵臣がいた。霊公は、弥子瑕を取次ぎ役に取り立てたので、臣下たちは、全て弥子瑕経由でないと、霊公の意向を聞くことができなかった。そこで弥子瑕は、それを良いことに、自分の欲しいままに国政を壟断し始めた。多くの臣下たちは、この状況を憂慮したが、全てが弥子瑕経由でないと霊公に奏上することができないために、弥子瑕の専横を告発することができなかった。そこで、ある宮中道化師が、弥子瑕の目を盗んで、霊公に目通りして言った。

 「私が、昨日見た夢は正夢となりました。」

 「ほう、どんな夢を見たのじゃ。」

 「竈の夢を見たのですが、陛下へのお目通りが叶いましたので、正夢でございました。」

 これを聞いた霊公は、怒って言った。

 「何を言うか。昔から、君主と会う前に見る夢は、太陽の夢と決まっておる。それが、どうしてわしと会う前の夢が竈なのじゃ。」

 「はい、私も不思議に思って、ずーっと考えていました。そもそも太陽は、あまねく天下を照らして、その恵みを広く与え、一つのものでその光を遮ることはできないものです。だから、君主と目通りする前の者は、太陽の夢を見るというのは、君主は、太陽と同じように、広く民に恩恵を施すからです。ところが、竈というのは、小さく一方向しか照らすことができず、人一人が前に座れば、後ろの者たちは、その光を見ることができません。そこで、私が竈の夢を見たというのは、陛下のご威光が一人の者によって独占されているということを意味しているのではないでしょうか。」

 直線的に弥子瑕の現状を説明しても、霊公は聞く耳を持たなかっただろう。そこで、道化師は、一計を案じて、弥子瑕を批判するのではなく、霊公自身に弥子瑕の存在を気付かせるために、わざと竈の夢の話をしたのである。このように、寵臣に対しては、面等向かって批判するのではなく、婉曲的に行う方が、採用され易い。
 



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