韓子(韓非子)
☆☆☆人と上手に付き合うための方法を徹底追求☆☆☆



トップページへ戻る

コーナートップへ戻る


第10篇 十過
第9節 他力本願は貧乏のもと

 『自身の力を弁(わきま)えず他人の力ばかりを当てにして、領土を削り取られる憂き目に遭うこと。』とはどういうことか。

 昔、秦国が韓国の宜陽を攻めたときのこと。宜陽は韓国にとって戦略上重要な町であったので、それこそ国家存亡の危機となった。そこで韓君は、この事態を打開すべく、重臣の公仲朋を召し出して意見を求めた。公仲朋は言った。

 「同盟諸国の援助は当てになりません。秦国の宰相である張儀を仲介として、和議を結ぶべきです。一郡を代償として割譲すれば成功するでしょう。その上で、共に南の楚国を討てば、秦国の脅威は楚国に移ることになります。これで、当面のわが国に対する脅威は回避できます。」

 「わかった。そうしよう。」


 韓君は、公仲朋を使者に立てて、秦国との和議の準備を進めていた。このことを知った楚王は、慌てて重臣の陳軫に相談した。

 「韓国の公仲朋が和睦の使者として秦国に向かおうとしているが、どうすれば良いだろうか。」

 「秦は韓の一郡を得ることにより、新たな兵を補充することになります。その兵を率いて、韓国と連合してわが国を討つのは、秦国歴代の悲願であり、わが国にとっては国家存亡の危機となります。この状況を打破するために、わが君は直ぐに韓国に対して使者を遣わして下さい。使者には多くの金銀財宝を持たせて、韓君に援軍を送るので踏み止まるよう伝えるのです。その上、韓国からの使者を派遣させ、その準備をしている所を確認させるのです。そうすれば、韓国も和睦を止め、徹底抗戦に臨むことになるでしょう。」

 「そうか。」


 そこで楚王は、急いで韓君に使者を遣わした。使者は韓君に言った。

 「わが軍は、貴国を救援するために、出兵の用意をしております。ここは、秦国に下るのを止めて、連合して戦おうではありませんか。」

 「しかしな。」


 韓君は渋った。

 「ご心配なら、どうか使者をわが楚国に派遣して下さい。その目で、わが軍の様子を確かめて頂きたい。」

 韓君は使者を派遣した。楚国では、戦車隊、騎馬隊を韓国へ続く道を北上させていた。楚王は、使者に会って言った。

 「ご覧の通り、援軍の用意ができ、貴国へ進軍しているところです。韓君には、安心するようお伝え下され。」

 使者は帰国して、韓君に報告した。

 「楚国の使者が申したとおり、楚軍は国境付近まで来援しております。」

 「そうか、ならば公仲朋の派遣は中止だ。」

 「陛下、お待ち下さい。」


 公仲朋が慌てて言った。

 「どうしてだ。楚国の援軍があれば、秦軍など懼るるに足らん。」

 「陛下、お考え下さい。わが国の危害の原因は秦国であります。口先だけの約束である楚国の援軍など当てになりません。楚王の虚言を信じて、秦国からの危害を無視されれば、わが国は立ち行かなくなります。お考え直しを。」


 しかし韓君は、公仲朋の言葉を信じず、楚王の言葉を信じた。公仲朋は、落胆し、怒って、それから10日間も参内しなかった。さて、韓国が秦国と交戦状態に入り、いよいよ宜陽が危なくなったので、韓君は楚王に対して救援を急ぐよう求めた。韓君は、何度も使者を楚国に遣わしたが、楚王からの援軍はなかなか来なかった。そうこうしているうちに、宜陽は陥落し、韓国は秦国に散々打ちのめされてしまった。このことを知った諸侯は、韓君を笑い者にしたという。

 だから、『自身の力を弁(わきま)えず他人の力ばかりを当てにしていては、領土を削り取られる憂き目に遭うことになる。』と言うのである。



 本サイトは、個人的な経験及び考えに基づいて構成されていますので、その内容において、正確性、信頼性および利益性を保証するものではありません。ですから、原因のいかんに関わらず、当方では、一切の責任を負いません。また、本サイトの情報に基づいて行った投資行為その他の損害についても、一切の責任を負いません。投資その他の行為については、自己資金の範囲内で慎重に行うようにして下さい。投資の最終判断、最終責任は、全てご自身でお願いします。