韓子(韓非子)
☆☆☆人と上手に付き合うための方法を徹底追求☆☆☆



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第10篇 十過
第2節 小利をもって大利を損なう

 『目先の利益ばかりを追い求め、真の利益を失うこと。』とはどういうことか。

 昔、晋国の献公が(かく)という国を討伐するために、その通り道である虞という国に、軍隊の通過許可をもらおうとしたときのことです。
 重臣の筍息(じゅんそく)が、一計を献公に進言しました。

 「わが国累代の宝物である垂棘の璧(すいしのへき)と、陛下の可愛がっておられる屈産の名馬を虞公に贈るのです。そうすれば、虞公も許可を与えてくれるでしょう。」

 「たしかにそうかもしれない。しかし、もし璧と馬だけを受け取って許可をくれなかったらどうなる。」

 「それ程心配されることはございますまい。虞公とて一国の君主です。受け取れば許可をくれるでしょうし、くれる気がなければ受け取らないでしょう。それに、そもそも虞は小国であり、わが晋とは比べ物にもなりません。(かく)があるからこそ、まだ国として存立できているようなものです。その(かく)が無くなれば、虞の存立など、わが君の思うが侭です。ですから、璧は内蔵から外蔵へ、馬は内厩から外厩へ移しただけと思えばいいのです。」

 「うむ、わかった。そうしよう。」
 
 献公が承諾すると、筍息は、即座に璧と馬を携えて虞公のもとを訪れます。

 「晋国は、近々(かく)国を討伐する予定です。つきましては、本日持参致しました垂棘の璧と屈産の名馬を献上致しますので、どうか領内通過のご許可を頂きたい。」

 虞公は璧と馬に目が眩み、即座に許可を与えようとしました。それを見ていた、家臣の宮之奇(きゅうしき)がこう言って諌めます。

 「陛下、なりません。そもそもわが国と(かく)は、車の両輪のような間柄であります。片方が欠けてしまえば、もう片方だけでは立ち行きません。ここで許可を与えられて(かく)を失うことになれば、わが国は遠からず滅亡の憂き目に遭います。」

 しかし虞公は壁と馬が欲しくてたまらず、宮之奇の諫言を無視して許可を与えてしいます。筍息は、許可を受けるや否や、兵を率いて虞を通過し、(かく)を討伐してしまいました。

 それから3年後、今度は孤立している虞国を攻め、これを散々に打ち破って滅ぼしてしまいました。そして、戦勝報告のとき、筍息は、垂棘の璧と屈産の名馬を携えて、献公に目通りします。

 「おお、璧は元のままだし、馬は元のままどころか、歯が生え変わるまで成長している。」

 献公は喜んで、筍息の献策を称えたのです。

 虞公の軍が敗北して、領土を削り取られたのはどうしてだろうか。それは、宝石や名馬という目先の利益に目を奪われて、国家存亡という真の利益を考えなかったからである。だから、『目先の利益ばかりを追い求め、真の利益を失ってはならない。』と言うのである。

 目の前の利益に目を奪われて、本当の利益を失うということは、生活の中では良くあることです。例えば、何かの資格を取ろうと思っても、お金がかかるから独学でやるという人がいます。確かに、独学で取れれば良いです。しかし、独学で取るのに2年かかるのと、講習を受けて半年で取るのと、どちらに真の利益があるでしょうか。
 他にも、割り勘のときに、自分だけ出すお金を少なくしたら、その場の出るお金は少ないでしょうが、そのことが、後々の交友関係、引いては出世などにも影響するかもしれません。
 自分にとっての真の利益は何かを見失うと、取り返しのつかない損失を蒙ることになるかもしれません。

 



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