韓子(韓非子)
☆☆☆人と上手に付き合うための方法を徹底追求☆☆☆



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第10篇 十過
第1節 小忠をもって大忠を損なう

『表面的な忠誠に目を奪われて、真の忠誠を見失ってしまうこと。』とはどういうことか。

 昔、楚の共王が、晋の詞と、陵(えんりょう)で戦ったときのことです。緒戦で楚軍は晋軍に大敗し、共王自身も目に矢を受けるという傷を負いました。その戦いの際中、全軍の司令官である子反(しほん)は、先陣をきって晋軍と激戦を繰り広げていました。戦いが一段落した頃、子反は喉の渇きを訴え、部下に水を急いで持って来るよう命じました。ところが運が悪いことに、水瓶が晋軍に全て打ち壊されていたので、水が無く、部下達は困り果ててしまいました。そこで近臣の穀陽(こくよう)が機転を利かせて、盃一杯の酒を子反に差し出します。子反は、怒って言います。
 「むむ、これは酒ではないか!!わしが所望したのは水じゃ!!」
 「いえ、これは酒ではありません。単なる水です。」
 「なに!?」
 「戦いの最中に酒を飲むのは死罪ですが、これは水ですから問題ありません。」
 
穀陽は、目配せで合図をしながらそう言った。
 「そうか、これは水か!!」

 子反は、ニヤニヤしながらそう言うと、盃を受け取って一気に酒を飲み干してしまいます。もともと子反は、三度の飯よりも酒が大好きだったのです。そのため、酒を一口飲んだら止めることができず、
 「もう一杯、もう一杯」
と、次から次へと杯を重ねてしまい、とうとう酔いつぶれてしまったのです。

 丁度その頃共王は、今日の敗戦の恥じを雪ごうと、明日の戦いの準備を着々と進めていました。そこで明日の戦いの作戦会議のために、司令官の子反を呼び出したところ、ケガと称して出て来ません。
 「自分でさえ、目に傷を負ったのだから、子反の傷はもっと酷いのではないか。」
 と、心配した共王は、わざわざ自身が負傷しているにもかかわらず、子反の見舞い方々作戦会議のために、子反のテントを訪れます。子反のテントに入ると、既に酒の匂いが充満しており、共王の目には酔いつぶれている子反が飛び込んできます。それを見るや共王は、子反に声すらかけることなくテントを出て、さっさと帰途についてしまいました。
 「今日の戦いは、私自身が負傷してしまう程の激戦であった。こういう時こそ司令官の才覚が恃みになるのだが、その恃みの司令官が酔いつぶれている。これでは楚国が滅びるどころか、国民にまでその害が及んでしまう。こんな状況では、とても明日戦うことなどはできない。」
 共王は、近臣の者にこう呟くと、全軍に撤退を命じたのです。

 そして楚に戻った共王は、子反を、国を滅ぼす大罪人として処刑したのでした。

 穀陽が子反に酒を勧めたのは、何も子反を憎く思ったり、殺したいと思ったからではない。子反に誠心誠意仕えようと思い、子反の喉を潤すために良かれと思ってしたにすぎない。しかし、結果的には子反を殺すことになってしまったのである。
 穀陽は、子反が酒好きなのを知っていた。だから、盃一杯程度の酒では酔わないだろうと考えて、酒を勧めたのである。しかし、酒好きの卑しさを理解していなかった。一杯飲むと、止められないということを・・・・。穀陽は、子反の行動の全てを理解して、酒を勧めたのではなかったのである。
 だから、『表面的な忠誠に目を奪われて、真の忠誠を見失ってはならない。』と言うのである。


 生活の中で、この人に対して良かれと思ってしたことが、逆にその人を苦しめることになったという覚えはありませんか。「わざとやったんじゃないんだから・・・。」とか、「良かれと思ってしたのだから、しょうがないでしょ。」というフレーズを聞いたことはありませんか。こういうことになるのは、表面的なことに騙されている場合が多いのです。本当に相手のことを思っていれば、どうしてあげるのが一番良いか、徹底的に考えましょう。その場の雰囲気とか、思いつきで行動すると、相手にいらぬ迷惑をかけることがあります。気をつけましょう。
 



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